(写真:核廃絶運動に熱心なヨルダン・ハシェミット王国のノア女王と。
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牧山ひろえの発言(英語)はこちらへ
2010年2月、フランス共和国のパリにおいて開催された「グローバル・ゼロ」の世界会議に、日本代表団の一員として参加しました。
「グローバル・ゼロ」とは、アメリカ合衆国で始まり、2008年12月にパリで設立総会が開かれた国際的な核廃絶運動の一つであり、「核兵器のない世界」を目指し、これを実現させようという運動です。


(写真:会議中の模様)
現在、世界を見渡せば、米露英仏中の五大国が依然として核保有国であるほか
・インド及びパキスタンが核保有国になっていること
・イスラエルが実質的に核を保有していること
・北朝鮮及びイランが核開発を続けていること
・テロリストによる核テロの危険があること
などの懸念があります。
ただ、その一方で、「核のない世界」をあらためて目指す動きも活発になってきています。例えば、皆さんのご記憶に新しいものだけでも
・2009年4月のバラク・オバマ米大統領によるプラハ演説
・2009年9月の国連安保理における「核兵器のない世界」を目指す決議
・2009年12月のオバマ大統領のノーベル平和賞受賞
などの出来事を挙げることができると思います。これらに象徴されるように、危険に満ち、かつ、経済的な負担も重い、核の恐怖による相互抑止戦略から脱却しようという意識が世界で共有されるようになってきています。
そこで、グローバル・ゼロは、2030年までに、すべての核保有国の核兵器をゼロにして、核兵器のない世界を実現することを目指し、まずは、今年2010年からの3年間に、米露両国の核弾頭を各1000発までに削減させるなどの目標を掲げたフェーズ1を手始めに、フェーズ4までの合計4段階にわたる計画を実行していきます。
その過程で、われわれ日本がはたす役割は大きいと思いますし、原子力を平和利用している日本に対する各国からの期待も大きいと思います。また、今後、核軍縮を実現していく上で予想される様々な課題に取り組む中で、核廃絶にかけるわが国の思いをあらためて全世界に発信できるよい機会になると思っています。広島・長崎において唯一の核爆弾の被害国となり、戦後、非核三原則を堅実に守ってきた日本の発言だからこそ、各国も耳を傾けてくれるものと思います。
他方で、日本の安全保障上の懸念についても各国に率直に述べていく必要があります。近隣諸国の軍備増強の行方、核開発について相互理解や協調を深めるべき国々の存在、米露等の大国の軍事力バランスなど、核廃絶と並行して解決すべきわが国の防衛戦略上の問題についても考えていかなければなりません。
このように、各国と協調して核廃絶へ向けた動きを加速させるとともに、わが国の安全保障についてもより確かなものとするためには、グローバル・ゼロのような世界的会議における対話や取組みが重要になってくるものと考えています。