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慶応大学の武藤佳恭教授がご担当されている「現代技術と社会」の授業で、
講義を行いました。
以下、その中で頂いた質問と、回答です。
Q.
牧山さんは、日本発の母子手帳を途上国に広めようとされていますが、日本において、母子手帳に記録されているワクチン接種記録を小学校就学時などにチェックする・・・という仕組みがないのはなぜですか。アメリカでは、ワクチン接種を就学条件にしているようです。
A.
ご指摘の通り、現在日本には母子手帳を使ってワクチン接種を小学校などでモニタリングする、という制度はありません。1994年に予防接種法が改正され、ワクチン接種は「義務」から「勧奨」に変更されました。背景には、ワクチンの副作用に対する恐れがあります。日本では感染症が蔓延するケースはほぼ見られないため、病気自体よりも副作用の方が確率的に高いことになります。
また、勧奨になってからも、実態としては接種率は極めて高く、ポリオで約99%、結核で約95%と、ほぼ全員が接種しているため、特に義務化せねばならない、という必要性も薄いと考えられます。
一方で、自治体で別途予防接種記録を管理しており、未接種の方に告知する制度があります。しかし、その接種管理台帳が「紙」で運用されているため、紛失などが生じるケースが多く、IT化に向けた取組を各自治体が進めているところです。将来的には、母子手帳もスマートフォンやi Padなどのアプリとして開発されると便利ではないか、と期待しています。
Q.
被災地に対するアスベスト対策はどのように実施されているのですか。
A.
大きく2つあり、一つはアスベストを含んだガレキ処理の労働者への安全対策(厚生労働省担当)、もう一つは、アスベストの大気中への流出防止対策(環境省担当)となります。
1.労働者への安全対策
2011年6月30日に、「石綿等が吹き付けられた建築物等からの石綿等の飛散及びばく露防止対策の徹底について(通知)」を定め、被災地だけでなく全国の各都道府県・政令市に対策のお願いをしています。具体的には、アスベストを含むガレキ処理時の手続き(石綿部分をビニルで覆う、マスクの着用など)を定め、労働基準監督所が見回りをしています。被災地については、2011年夏時点で70%-80%のマスク着用率でしたが、現在ではほぼ100%の着用率となっています。牧山ひろえも震災があって間もない頃から精力的にマスク着用を浸透させるよう訴え続けてきており、効果があったのではないか、と考えております。
2.大気中への流出防止対策
環境省が東北地方の505地点のアスベストを含む建築物の解体現場において実施した大気中のアスベスト濃度調査(2012年3月時点)の結果、アスベストが規定値よりも多く検出された箇所は4箇所でした(宮城県石巻市、茨城県水戸市、茨城県稲敷郡、栃木県真岡市)。
ただ、この大気汚染調査は明確にアスベストが使用されている建築物にしか実施できず、かつ任意調査となります。したがって、アスベストが使用されている「かも」しれない建物の解体現場や、業者が難色を示した場合には調査ができません。この点については、評価基準を全国で統一的に決めるためにも、国で濃度測定の義務化を定める必要がある、と感じています。